●日本の大学院はグローバル化に追いついていない 野依良治氏による講演 (2007年10月23日)
日本の科学者たちの代表機関である「日本学術会議」で特別講演が開かれました。
by thier
第151回総会では、野依良治氏による「知識基盤社会における我が国大学院の『あるべき姿』-グローバル・エクセレンスを目指す」という講演でした。今回の講演では主に「我が国の大学院の問題点」について考察され、改善点の提案がされています。
野依氏は、1938年生まれでハーバード大学博士研究員の学歴を持ち、ノーベル化学賞を受賞して国内外でも有名な人物です。大学院を卒業してさらに大学院で働いた経験をもつことから、日本の大学院のあり方について問題点を指摘しています。
「企業における博士課程修了者の状況に関するアンケート」(日本経済団連より)では、博士課程修了者について問題があると考えているポイントは何かという質問で、「コミュニケーション力」が最も問題であり、「協調性」が2番目に問題で、「業務遂行能力」が3番目に問題だということが明らかになりました。
これは、日本の大学院が「研究重視」で「教育軽視」の風潮を持ち、学部と大学院の間に連続的な縦割り構造があるからだと野依氏は述べています。また、この縦割り構造が大学側の学部学生を「囲い込み」、学生の「閉じこもり」をおこしているとのことです。
日本では、修士課程入学者が自校出身者(大学学部も同じ大学)の割合が、理学・工学・農学の分野で90%を超えています。しかし、世界の主要大学を見てみるとケンブリッジ大学で18.6%、コロンビア大学では4.5%しかいません。
野依氏は、「知に国境は存在しない。グローバルな頭脳獲得競争の中で我が国は孤立している」と述べ、囲い込みを根絶して人材の対流を生み、教育の質を上げることによって世界に開かれた競争力のある大学院を構築する以外に再生の道はないとしています。
野依氏の考える大学院重点化大学の「あるべき姿」とは、具体的に「最高の教員をひきつける待遇と環境を整え、国際公募で採用する」、「国内外から多様な学生を集める(外国人学生は2割以上を目指す)」、「大学院生には修士課程から経済支援」の3つです。
日本は、大学院の教育面で国際基準には達してないようです。世界の大学院としてもっとグローバルな視点に立つことが今度の課題です。優秀な研究者が日本から世界へ、そして世界から日本へと交流が深まる日が待ち遠しいものですね。
■関連記事
KKSブログ: 大学向けのeラーニングシステム「RENANDI」がバージョンアップ
KKSブログ: メディアリテラシー教材「広告小学校」 東京学芸大/電通が教育プログラムを共同開発
KKSブログ: 先進国の大学進学率と学位取得率がどんどん上がる 一位はオーストラリア
« いじめへの的確な対応は学校と家庭両方で。 | トップページへ みんなで緑の校庭をつくったよ! 「運動場の芝生化モデル事業」 »
最新記事一覧
- 日本人の大人読解力・数的能力は1位 IT活用はOECD平均並み(2013年10月08日)
- 日本人の大人読解力・数的能力は1位 IT活用はOECD平均並み
- 汚れが気になる人向け、「MONO」シリーズから黒色消しゴムが新登場
- きれいな文字が書ける『文字力アップノート』発売~ナカバヤシ
- 教室とeラーニングをシームレスに連携させるシステム タブレット版も登場
- ソフトバンクの選手といっしょに練習できる野球教室 参加者募集中!
- 授業改善に役立つパンフレット『授業アイディア例』を作成~国立教育政策研究所(2013年10月07日)
- 『ジェットストリーム』から操作性、高級感を両立した社会人層向けペンが登場
- 教育用ICT機器は市場拡大の一途、タブレット端末が牽引する見込み
- この秋、東京国立博物館のワークショップで歴史上の「文化」を体験しよう
- クリスマスを外国で過ごせる学生向けホームステイ語学研修
- サッカーキッズ育成「オンライン自主練サービス」の試験運用が開始されています(2013年10月05日)
- 日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査~文化庁(2013年10月04日)
- スマートフォンやタブレットを使っていても、やっぱり仕事の相棒は「ノート」
- 日本食文化・川場の食材・自然写真を融合「KAWABA国際自然文化サミット」【10月5日~20日、10月18~20日群馬県川場村】
投稿者 kksblog : 2007年10月23日 19:39